固定資産の減損テストを検討する際、まず必要となる重要なプロセスが減損テストを行う単位の決定です。減損テストは、可能な限り個別資産ごとに実施しますが、回収可能価額を個別資産ごとに見積もることができない場合は、CGU(資金生成単位)と呼ばれる資産グループの単位で検討を行います。
本稿では、IFRSにおけるCGUの定義、決定の際の考慮事項、および日本基準との比較について解説します。
目次
CGU(資金生成単位)とは
IAS第36号において、CGUは以下のように定義されています。
「他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローとはおおむね独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の識別可能な資産グループ」
例えば、小売業の会社においては、CGUは各店舗単位で設定されていることが一般的です。これは、通常、個々の店舗は、他の店舗に依存することなく独立してキャッシュ・フローを獲得することができるためです。
CGUの決定の考慮事項
キャッシュ・インフローに基づいて決定される
IAS36号におけるCGUの定義は、キャッシュ・フローではなくキャッシュ・インフローに基づいています。
例えば、小売業において複数店舗で共通のマーケティング費用(キャッシュ・アウトフロー)が発生していても、各店舗が独立して売上(キャッシュ・インフロー)を上げているのであれば、原則として店舗ごとにCGUを設定します。2007年3月のIFRICのアジェンダ決定では、マーケティング費用のような店舗間で共通のキャッシュ・アウトフローがあるとしても、CGUの決定におけるキャッシュ・インフローの独立性の判断に影響しないとされています。
経営者によるモニタリングの方法や、事業の継続または処分に関する意思決定の方法等を考慮する
例えば、小売店舗を展開する企業において、個々の店舗の商品の仕入れ、マーケティング等は法人レベルで管理されている場合であっても、以下に当てはまる場合は個々の店舗がCGUとなる可能性が高いと思われます。
・売上及び利益は個々の店舗レベルで測定されてモニタリングされている。
・個々の店舗は異なる地域及び顧客基盤を有している。ある店舗が閉鎖された場合、その顧客が自社の他店舗に流出せず、他店舗のキャッシュ・フローに影響を与えない。
キャッシュ・インフローは、外部の取引先からの流入である
CGUの定義におけるキャッシュ・インフローは、当該企業の外部の取引先から受け取る現金及び現金同等物の流入であるとされています。ただし、企業内部間の取引から受け取るキャッシュ・インフローであっても、対象となる製品・サービスに活発な市場*が存在する場合は、CGUの定義における独立したキャッシュ・インフローを生成すると判断されます。
*活発な市場とは、資産又は負債の取引が、継続的に価格付けの情報を提供するのに十分な頻度と量で行われている市場を意味する。
例えば、同じ企業内の工場Xから工場Yへ中間製品を販売している場合、工場Xのキャッシュ・インフローは工場Yから独立したキャッシュ・インフローを生成しているとは言えず、工場Xは別個のCGUとはならないことになります。
ただし、当該中間製品が外部の市場で継続的に販売できるものである場合は、工場Xは概ね独立したキャッシュ・インフローを生成できると考えられ、工場Xは別個のCGUとなる可能性があります。
日本基準との比較
日本基準のCGUの定義及び考慮事項
日本基準では、「資産のグルーピング(CGU)は、他の資産または資産グループのキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う」と定義されています。
CGU決定にあたり、考慮すべき事項は下記のとおりです。
①管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単位等を考慮してグルーピングの方法を決定する。
②必ずしも企業外部との間でキャッシュ・フローが生じている必要はなく、内部取引であっても合理的な内部振替価格で計上されていればよい。
③グルーピングの単位を決定する基礎から生ずるキャッシュ・インフローが、他の単位から生ずるキャッシュ・インフローと相互補完的であり、当該単位を切り離したときに他の単位のキャッシュ・インフローに大きな影響を及ぼす場合は、当該他の単位とグルーピングを行う。
実務上の差異
キャッシュ・フローの独立性の判断において、日本基準では企業の内部取引から生ずるキャッシュ・インフローであってもよいとされており、また、IFRSのように対象となる産出物に活発な市場が存在する場合の明確な規定はありません。しかし、日本基準は「相互補完的」という概念があり、内部取引の対象となる製品・サービスに市場性があり、他単位のキャッシュ・インフローと相互補完的ではない場合は、別個にグルーピングすることになります。従って、結果としてIFRSと大きな差異は生じないものと考えられます。
上記より、IFRSと比較して定義上の用語の違いはあるものの、基本的なグルーピングの考え方について大きな相違はなく、実務的な結論は同様となるケースが多いのではないかと考えられます。

